黒田バズーカ拡大と解散総選挙

■要約

黒田総裁は年2%のインフレ目標を守るためという名目で異次元の金融緩和政策の拡大を決定したが、実際には、①米国の量的緩和終了を受け、その代わりに日本が世界的なマネー供給を担うため、②消費税増税を政府に決断させるために、今回の決断をしたと考えられる。

異次元の金融緩和政策をさらに拡大したために、一層の円安が加速するか、または/かつ、国債金利が上昇する可能性が高まったことから、政府としても消費税増税を安易に先延ばしできなくなった。

今回の解散の決定(の一つの要因として)は、消費税増税は伸ばすものの、次回は確実に行うために「国民に信を問う」ということだと考えられる。

■黒田バズーカ拡大の理由

10/31の金融政策決定会合で日銀は異次元の金融緩和をさらに拡大し、年間80兆円(30兆円の追加)に相当するペースで増加するように金融調節をする旨の発表を行った。理由としては現下の経済状況では年2%の物価上昇(除く消費税引き上げ効果)の達成が困難だからということ。実際、景気回復スピードは鈍っていることから、消費税増税の効果を除けばおそらく1%の物価上昇くらいになるであろう。

しかし本来ならば、物価は着実に上昇しそうな雰囲気であり、無理して「異次元」とまで言って始めた金融緩和政策を、ここで拡大させる必要性は感じられない。にもかかわらず、拡大を決めたのはその前日の米国の量的緩和終了のFOMC発表に関係すると思われる。

米国の量的緩和終了自体は市場では織り込み済みであり、最たるサプライズはないものの、米国を除く各国とも景気状況は芳しくなく、特に欧州は景気減速感が強い状況にある。また世界経済をけん引している中国経済も減速傾向が明らかであるだけに、ここで世界的レベルでのベースマネーの供給の伸びが少なくなり、相対的な引き締めになった場合、世界的な減速傾向をさらに強める結果になる。

とはいえ、米国経済の現状を考えた場合、これ以上の量的緩和の継続は実体経済を加熱化させる懸念もある。そこで、米国に代わって、世界的なベースマネーの供給を日本が担うために緩和政策の拡大を決断したように感じる。

さらに、黒田総裁が財務省官僚であったことを考えれば、やはり財政規律を重視し、消費税の10%への引き上げを政府に促す必要があるからという理由もあろう。日銀にとっては「背水の陣」的な決定ではあるものの、「景気が良くならないのは日銀の緩和政策が甘いから」という「言われ無き罪」を着せられる心配もなく、「日銀はここまでやったのに」という演出にもつながるので、市場にとってもサプライズ的な拡大を決定したのだろう。

ここで政府が消費税増税を見送れば、円安が加速するか、または/かつ、国債金利が上昇することになる。つまり、日銀としては「(消費税増税に対して)最後通告をした」ということになる。

■解散総選挙へ踏み切った理由

日銀の最終通告を受け、政府が消費税を単に「引き伸ばし」をした場合の影響はかなりはっきりしていることから、予定通り引き上げるか、または引き伸ばすにしても次の引き伸ばしはないというイメージを市場に示す必要がある。現下の経済状態で「引き上げ」は現実的ではないのははっきりしていることから、引き伸ばしを選択せざるを得ないものの、水ものの経済状況を相手に単に引き伸ばしを宣言するだけでは、市場は「また引き延ばすだろうな」「政治家として増税はやはり怖いよね」という思惑から、円安が加速するか、または/かつ、国債金利が上昇する可能性を払しょくできない。

そこで苦肉の策で「解散総選挙」となったとも考えられる(当然、これだけで解散を判断したのではないだろうが・・・)。

現在状況では自民党が大敗し、過半数割れする心配は少ない。となれば、さまざまな公約の中に、さらっと「1年半先に消費税増税を実施」と書いておけば、「国民に承認された」ことになる。市場としても財政規律さえ守られれば、現時点では「売り急ぐ」という必要も見当たらないので、(円安傾向は続く可能性はあるが)国債の金利上昇を招くことはないと思われる。

■国民生活に対する影響

黒田総裁としては「コミットしたことを守りたいだけ」という言い訳もあろうが、現下の経済状況を考えれば、金融政策を出動させる状況にはないと思われる。

今は景気が鈍化しているものの、これは今年行った消費税増税による影響であると考えられる。ここで無理矢理に物価上昇を試みて金融緩和の拡大を行ってみても、実業に流れる資金は少なく(つまり、信用創造で貸し出しが増加する可能性はあまりなく)、結果として株式やマンション等の資産価格を上昇されるだけ、または円安からの輸入物価上昇を招くだけであり、実体経済に悪影響を及ぼしかねない

消費税増税の必要性は認めるものの、拙速な政策は国民政策を混乱させるだけである。また、ここでの解散総選挙も「大義」は感じられないし、政治空白を招くだけであることから、やり方として強引過ぎると感じる。

takuom について

高崎商科大学 商学部/大学院商学研究科 教授、早稲田大学 理工学研究所 客員研究員/エコノミスト/大学教員/金融・ファイナンス、経済統計、非営利事業、環境政策/天然住宅バンク理事【著書】銀行システムの仕組みと理論(単著)、おカネが変われば世界も変わる(共著) 【お願い】執筆、講演等のご依頼は下記(メール)まで。メール:tkmaeda1963@4月@gmail.com(但し、実際に送信する際には「@4月@」を「@」に変更してください)
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