「民意」は市場に反映される!

先週(10/3)にアゴラに投稿したものです。

http://agora-web.jp/archives/1102377.html

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為替レート(対ドル)が、またも、83円/ドル台に戻ってきています。9月末に発表された「外国為替平衡操作の実施状況」によれば、2兆円を超える(2兆1,249億円)為替介入があった模様。にもかかわらず、その効果は非常に軽微であったと言わざるを得ない状態です。まぁ、ここからの(82円/ドル台を超えての)円高には、投機筋としても常に「日本の政府・金融当局による為替介入を警戒せざるを得ない」という意味では、9月の介入も「一定の歯止め効果はある」とはいえます。が、「実弾による為替介入」でないと円高を回避できないとなれば、先進各国の協調がない状況において、投機筋の力に押し切られる可能性も高いように感じます。

そもそも「実弾による為替介入」というのは、政府・金融当局が自ら一投資家となり、相場の流れを変えさせるという行為なのですから、そこには相場観が必要となります。「円の発行元だ」というだけで無暗に“力”で介入を実施しても、為替市場というのは1日に150兆円に達する場合もある巨大市場なので、思い通りに市場を操縦できるはずはありません。その意味で実弾による為替介入は、いわば「最終兵器」と考えるべきものであり、多用するような政策ではありません。本来、為替政策というのは、為替相場が異常な動きをした時にだけ云々するというものではなく、常に「フォワード・ルッキング(将来を予想した先回り)」を心がけ、日頃からの「市場との対話」を行うことが重要なのです。

というか・・・・

市場は「投資家全体のコンセンサス」なのですから、そのまま「民意」と考えるべきでしょう。民意を汲んで、または、民意を先取りして政策を行うというのは、政府として当たり前のことなのですから、政府としても常に(為替&株式、債券などの)市場を注視し、動向を見極めながら、適切な対応をしていくのは“当然の話”と言えます。

にもかかわらず、日々は全く何もしないで「市場が思い通りにならないから」ということで“力づく”で介入してみても、上述の通り、その効果は一時的なものとなるのは火をみるよりも明らかです。さらにいえば、本来、「現在の市場は経済学的に間違っている」と感じるのは、政府・金融当局も含めて投資家の勝手な思い込みに過ぎないのです。“経済学”では見逃す情報でも、市場は全てを認識して価格を成立させているのですから、市場は間違えることはなく、常に「正しい」のです。逆に、経済学が想定するモデルは、単に社会全体を矮小化しているに過ぎないのですから、市場が経済学通りでない場合には「モデルのどこかに誤りがある」と認識する方が、より正しいわけです。

といっても・・・

何もしないで「市場に任せる」だけでは、市場は経済を混乱させるだけです。そもそも「市場」とは「人間の欲望そのものの集まり」であり、「人間の動物的な部分」、つまり、人間の中に潜む「猛獣」の部分が顕在化したモノといえるので、そのままではあまりにも危険な存在といえます。なので、市場に対しては、いろいろと規制や制度を作った上で、おかしな方向に進まないように政府・金融当局が先回りして(フォワード・ルッキングにより)手を打ちながら、しかも日々「市場との対話」を行うことが大切になるのです。

日々、対話をし続けなければ、市場という猛獣は、規制や制度などを無視して、人間に恐ろしい牙をむいて襲ってくることになるでしょう。まぁ、日々しっかりと「市場との対話」を続けていても「何が起こるかはわからない」のが市場なので、そのための非常手段として「市場への介入を行う」というのが正解なのでしょうね。

にもかかわらず、現在の政府・金融当局は、日々の「市場との対話」を軽視し、適当に「適切な時に適切に対処する」というだけで、市場に追い込まれるだけ追い込まれた末に、最終手段である介入により対処するというやり方です。これでは単に「投機筋のおもちゃにされるだけ」になり、対話も何もできません。介入をしたとしても、その効果がなくなれば、市場はさも何もなかったかのように、自らの思う方向に(それが政府の考えとは違っていても)動くものです。

現状、中国との件や検察の不祥事等で、政府としては「市場を注視している場合ではない」のかもしれませんが、米国の経済指標もあまり芳しくなく、米FRBもさらなる緩和を模索しています。これが、今、再度円高になっている要因です。市場では日銀のさらなる緩和を期待する声も出だしてきている状況だけに、また、8月のように催促相場が起こる可能性が高まりつつあります。

「目先の政策を云々しろ」と言っているのではありません。長期的なビジョンを示しつつ、現状の経済政策のあり方、当面の課題に対して「如何に取り組むのか」などを市場に提示するのが、そのまま「市場との対話」になるのです。「適切な時に適切に対処する」というだけでは、誰も「何をしたいのか」を理解することはできません。市場は民意なのですから、その点をしっかりと認識して、わかるように説明をしてほしいものです。幸い、国会論争も始まったので、この点についてしっかりと示し、市場が良からぬ方向に動き出さないように、丁寧な対応をして欲しいものです。

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takuom について

高崎商科大学 商学部/大学院商学研究科 教授、早稲田大学 理工学研究所 客員研究員/エコノミスト/大学教員/金融・ファイナンス、経済統計、非営利事業、環境政策/天然住宅バンク理事【著書】銀行システムの仕組みと理論(単著)、おカネが変われば世界も変わる(共著) 【お願い】執筆、講演等のご依頼は下記(メール)まで。メール:tkmaeda1963@4月@gmail.com(但し、実際に送信する際には「@4月@」を「@」に変更してください)
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