将来の物価動向と金融政策

以下は、サブプライム問題以降、リーマンショック前に書いたものですから、現在の状況とは異なっています。
 
***********************
   ブレークスルー経済学 by T.Maeda
***********************
『将来の物価動向と金融政策』

経済学では、現在と未来をつなぐ考え方として「期待」というものを利用します。物価についても、「まだ物価自体は変化していない状態」の中で(つまり、「短期」)、物価の変化を予想する場合に「期待物価」というものを想定します。

この「期待物価」は「期待」ではあるものの、経済主体(企業など)の実際の行動に影響を与えます。

なぜなら、企業が設備投資等を行う場合、将来期待される物価の変化率の方が「現時点の金利」より高い場合、足元の「金利が高い時」でも、企業は投資を増加させると考えられているからです。

換言すれば、企業は「足元の金利(これを「名目金利」といいます)」ではなく、「期待物価変化率を考慮した金利(これを「実質金利」といいます)」に影響を受けることになる(*1)ということにもなります。

(*1) 実質金利=名目金利-期待物価上昇率

つまり、ある均衡状態から期待物価上昇率が上昇した場合、実質金利は低下するので、企業は投資を増加させようとするため、資金ニーズが高まり、銀行貸出等が増加し、GDPを押し上げることになります。

この場合、「景気の上昇スピードが速すぎる」と日銀等の中央銀行が判断した場合、期待物価上昇率を調整するようにマネー量を吸収する政策をとります(金融引締め政策)。

ここでのポイントは「期待物価上昇率を調整するようにマネー量を吸収する」ということであり、過剰と考えられる期待物価上昇率を抑えることができないほどのマネー量の吸収であれば、政策的には無効になり、物価上昇が過熱化することになります。

物価が過熱化すると、一般に「人為では止めることが非常に困難になる」ことが知られているので、日銀等の中央銀行は「大胆にして慎重な行動をする」ように求められます。

このように各国中央銀行は、将来的な物価期待を考慮した金融政策をすることが期待されているのであり、これを「フォワード・ルッキング(先見性のある)な政策」といわれています。

したがって、現在のように将来物価が上昇しそうな状態においては、先回りをして「金利を上昇させる」という政策が必要になるのです。

このところの経済統計をみる限り、日米欧ともにCPI(消費者物価指数)が上昇傾向にあり、このままだとさらに物価上昇する可能性があります。

確かにサブプラ問題で「流動性」が大切ではありますが、物価への配慮を怠ると、サブプラ問題以上に深刻な状態になる可能性もあるので、投資家としてもその点を注意しておく必要があるでしょう。

広告

takuom について

高崎商科大学 商学部/大学院商学研究科 教授、早稲田大学 理工学研究所 客員研究員/エコノミスト/大学教員/金融・ファイナンス、経済統計、非営利事業、環境政策/天然住宅バンク理事【著書】銀行システムの仕組みと理論(単著)、おカネが変われば世界も変わる(共著) 【お願い】執筆、講演等のご依頼は下記(メール)まで。メール:tkmaeda1963@4月@gmail.com(但し、実際に送信する際には「@4月@」を「@」に変更してください)
カテゴリー: 経済学基本 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中