国際収支均衡という考え方

今週は米国で国際収支の発表があります(米国際収支は四半期ごとの発表です)。市場でも注目されている統計ですので、この点のお話を・・・
 

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   ブレークスルー経済学 by T.Maeda
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『国際収支均衡という考え方』

経常収支とは「モノやサービスにおける国を跨いだ移動」についての収支であり、資本収支とは「国を跨いで移動した資金によって変動した対外資産負債の増減」を「収支」という形で表したものです。

したがって、「モノやサービスの収支尻」と「おカネの増減」は絶対値で等しくなければなりません(符号は逆)。それゆえ、「経常収支+資本収支=0(ゼロ)」という「国際収支の考え方」が生まれることになるのです。

理論上は「経常収支+資本収支=0」でいいのですが、実務的な観点から、国際収支統計では資本収支を「民間保有の対外資産負債の増減」と為替レート等の安定化のために「政府が保有している対外資産の増減」に分けて記録しています(「資本収支」という場合、一般には民間の分を指します)。

このうち後者の「政府が保有している対外資産」のことを「外貨準備高」といい、ここではその「増減」を記録しています。つまり、国を跨いで移動した資金によって変動した対外資産負債の増減を「民間部門による増減」と「政府部門による増減」にわけて記録していることになります(つまり、経常収支+資本収支+外貨準備増(-)減(+)=0)。また、政府はこの「外貨準備」を使って「為替介入」などを行います。

ここで資本収支の場合、「対外資産の増加(減少)」とは「現時点の資金の流出(流入)」を意味するので、資本収支が「赤字化(黒字化)」し、国際収支統計上は「マイナス(プラス)」の値が増加することになります*。

*対外資産とは相手国サイドでみれば負債なので、「自国の対外資産が増加した」ということは、その資産を取得するために自国から相手国へ資金が流出していることになります。

このような関係を「外貨準備高」に当てはめれば、「外貨準備高」とはそもそも「政府保有の対外資産」なので、その対外資産が「増加(減少)」するということは「現時点の資金の流出(流入)」を意味するので、「資本収支」を「赤字化(黒字化)」させることになり、国際収支統計上は「マイナス(プラス)」の値が増加することになります。つまり、「外貨準備高の増加(減少)」は国際収支統計上の「マイナス(プラス)の値の増加」になります。

以上が国際収支の考え方です。

では、例えば為替レートが一定であった時に、「当該国の景気」が良くなれば「輸入」が増加し、経常収支は「赤字化」することが考えられます。

この場合、当該国の「景気が良い」ということは当該国の資金ニーズが高いことを意味するので、「国内金利が上昇する」ことになります。そして、この「金利の上昇」を受けて海外から資金が流入し、「資本収支は黒字化する」ことになり、トータルとしての国際収支は均衡すること(つまり、「0(ゼロ)」)になります。

このように「モノやサービス」の移動とそれに伴う「資金」の流れが、ともに絶対値が等しく、方向が逆になるので、「一方が黒字化すれば、他方は赤字化する」ということで理解できると思います。

では、別の例として「モノやサービスの移動」に関係のない状態の下で「資金移動」だけが起こった場合、どのような事態になるでしょうか?

ある国の国際収支が均衡していた時、何かの事情により、当該国に資金が流入してきたとします(資本収支の「黒字化」)。この場合、この資金流入により、「為替レート」は自国通貨高(つまり、円高)になります。この「円高」により、経常収支は「赤字化」するため、元の通り、国際収支は「均衡」を取り戻すことが可能です。

しかし、経常収支の「赤字化」は、当該国にとって「深刻なダメージになる」と政府が判断した場合、円高阻止のために「円(自国通貨)を売って、ドル(貿易相手国通貨)を購入する」という「為替介入」を行うことがあります。

これを「円売り介入」といいますが、このような介入の場合、ドル(貿易相手国通貨)を買うことになるので「外貨準備」は増加することになり、政府保有の「対外資産が増加する」ので、「資金流出」と同じ効果があることになります(「外貨準備の増加」は国際収支的には「マイナスの値」の増加になります)。

この場合には、民間部門の「資本収支の黒字化」は政府部門の「外貨準備の増加」で相殺され「為替レート」には影響を与えず、経常収支は一定のまま保つことが可能となるのです。

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■上記内容に関しての注意事項

上記の「国際収支統計」はバージョンが古いものについての内容になっています。

平成26年1月に国際収支統計が大幅に見直しされていることから、現在では上記で用いている用語(例えば、「資本収支」など)が現在では使用されなくなっているものが多く存在します。経済学的な考え方は同じなのですが、統計上の話ですので、改正された内容はご確認いただくことが肝要です。

下記のURLの私のサイトで若干の説明をしています。

http://goo.gl/JOaCq1

よろしくお願いいたします。

2014年8月24日、10:41am

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takuom について

高崎商科大学 商学部/大学院商学研究科 教授、早稲田大学 理工学研究所 客員研究員/エコノミスト/大学教員/金融・ファイナンス、経済統計、非営利事業、環境政策/天然住宅バンク理事【著書】銀行システムの仕組みと理論(単著)、おカネが変われば世界も変わる(共著) 【お願い】執筆、講演等のご依頼は下記(メール)まで。メール:tkmaeda1963@4月@gmail.com(但し、実際に送信する際には「@4月@」を「@」に変更してください)
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