ハーマン・デイリー「『定常経済』は可能だ!」岩波ブックレット

Facebookの枝廣淳子さんのタイムラインに流れていたので買った本(ブックレット)が面白かった。

ハーマン・デイリー「『定常経済』は可能だ!」岩波ブックレット、¥520+税

現実の金融システムを考慮した場合には「無理」としかいえない政策提言もあるが、総合的には少ない分量(全63ページ)の中で要点をまとめ・わかりやすく書いてあり、読み物としては評価できる(金融の内容の他にも最後の「政策提言」の部分は一般の経済学の研究者からはかなり厳しい評価をされるだろう内容になっている・・・)。

この本で批判の的になっている「限界効用等」を使った経済分析が、私の主なフィールドなので、かなり新鮮な感じで読めた(「絶対的過少性」を考える重要性など)。

例えば、「持続可能性の三つの条件」として・・・

①「再生可能な資源」の持続可能な利用速度とは、その資源の再生速度とを超えてはならない。

②「再生不可能な資源」の持続可能な利用速度は、再生可能な資源を持続可能なベースで利用することで代用できる速度を超えてはならない。

③「汚染物質」の持続可能な排出速度は、環境がそうした汚染物質を循環し、吸収し、無害化できる速度を上回ってはならない(←原発はこの点が補完できていないことになろう)。

上記3つは当たり前ではあるものの、経済分析では結構無視してしまう事柄であり、これからの経済分析ではこれらの点を考慮した考察が求められると感じた。また、「完全雇用が目的で、成長がその手段であったはずなのに、今では成長が自己目的化している」といった部分も共感が持てる。

今後の社会は、持続可能なシステムの上に、雇用を第一義にした経済運営がなされるべきであり、そのための経済分析が求められ、そうした分析の下で政策が行うべきだと考える。

アベノミクスの言うように「成長」は大切ではあるが、経済成長が目的化してしまうと、リカードの比較生産費説に基づいた効率的な自由貿易や安価な労働力を求めて海外に生産拠点を移すようになり、国内の雇用を損なうことがあっても顧みない社会システムになってしまう。

これでは本末転倒であり、社会は豊になっていかない。なので「円安に」というやり方は歴史が示すように国際的な批判を招くだけである。

総選挙を前にして「何が大切なのか」を考えるためにも一読する価値は十分にある本(ブックレット)である。

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黒田バズーカ拡大と解散総選挙

■要約

黒田総裁は年2%のインフレ目標を守るためという名目で異次元の金融緩和政策の拡大を決定したが、実際には、①米国の量的緩和終了を受け、その代わりに日本が世界的なマネー供給を担うため、②消費税増税を政府に決断させるために、今回の決断をしたと考えられる。

異次元の金融緩和政策をさらに拡大したために、一層の円安が加速するか、または/かつ、国債金利が上昇する可能性が高まったことから、政府としても消費税増税を安易に先延ばしできなくなった。

今回の解散の決定(の一つの要因として)は、消費税増税は伸ばすものの、次回は確実に行うために「国民に信を問う」ということだと考えられる。

■黒田バズーカ拡大の理由

10/31の金融政策決定会合で日銀は異次元の金融緩和をさらに拡大し、年間80兆円(30兆円の追加)に相当するペースで増加するように金融調節をする旨の発表を行った。理由としては現下の経済状況では年2%の物価上昇(除く消費税引き上げ効果)の達成が困難だからということ。実際、景気回復スピードは鈍っていることから、消費税増税の効果を除けばおそらく1%の物価上昇くらいになるであろう。

しかし本来ならば、物価は着実に上昇しそうな雰囲気であり、無理して「異次元」とまで言って始めた金融緩和政策を、ここで拡大させる必要性は感じられない。にもかかわらず、拡大を決めたのはその前日の米国の量的緩和終了のFOMC発表に関係すると思われる。

米国の量的緩和終了自体は市場では織り込み済みであり、最たるサプライズはないものの、米国を除く各国とも景気状況は芳しくなく、特に欧州は景気減速感が強い状況にある。また世界経済をけん引している中国経済も減速傾向が明らかであるだけに、ここで世界的レベルでのベースマネーの供給の伸びが少なくなり、相対的な引き締めになった場合、世界的な減速傾向をさらに強める結果になる。

とはいえ、米国経済の現状を考えた場合、これ以上の量的緩和の継続は実体経済を加熱化させる懸念もある。そこで、米国に代わって、世界的なベースマネーの供給を日本が担うために緩和政策の拡大を決断したように感じる。

さらに、黒田総裁が財務省官僚であったことを考えれば、やはり財政規律を重視し、消費税の10%への引き上げを政府に促す必要があるからという理由もあろう。日銀にとっては「背水の陣」的な決定ではあるものの、「景気が良くならないのは日銀の緩和政策が甘いから」という「言われ無き罪」を着せられる心配もなく、「日銀はここまでやったのに」という演出にもつながるので、市場にとってもサプライズ的な拡大を決定したのだろう。

ここで政府が消費税増税を見送れば、円安が加速するか、または/かつ、国債金利が上昇することになる。つまり、日銀としては「(消費税増税に対して)最後通告をした」ということになる。

■解散総選挙へ踏み切った理由

日銀の最終通告を受け、政府が消費税を単に「引き伸ばし」をした場合の影響はかなりはっきりしていることから、予定通り引き上げるか、または引き伸ばすにしても次の引き伸ばしはないというイメージを市場に示す必要がある。現下の経済状態で「引き上げ」は現実的ではないのははっきりしていることから、引き伸ばしを選択せざるを得ないものの、水ものの経済状況を相手に単に引き伸ばしを宣言するだけでは、市場は「また引き延ばすだろうな」「政治家として増税はやはり怖いよね」という思惑から、円安が加速するか、または/かつ、国債金利が上昇する可能性を払しょくできない。

そこで苦肉の策で「解散総選挙」となったとも考えられる(当然、これだけで解散を判断したのではないだろうが・・・)。

現在状況では自民党が大敗し、過半数割れする心配は少ない。となれば、さまざまな公約の中に、さらっと「1年半先に消費税増税を実施」と書いておけば、「国民に承認された」ことになる。市場としても財政規律さえ守られれば、現時点では「売り急ぐ」という必要も見当たらないので、(円安傾向は続く可能性はあるが)国債の金利上昇を招くことはないと思われる。

■国民生活に対する影響

黒田総裁としては「コミットしたことを守りたいだけ」という言い訳もあろうが、現下の経済状況を考えれば、金融政策を出動させる状況にはないと思われる。

今は景気が鈍化しているものの、これは今年行った消費税増税による影響であると考えられる。ここで無理矢理に物価上昇を試みて金融緩和の拡大を行ってみても、実業に流れる資金は少なく(つまり、信用創造で貸し出しが増加する可能性はあまりなく)、結果として株式やマンション等の資産価格を上昇されるだけ、または円安からの輸入物価上昇を招くだけであり、実体経済に悪影響を及ぼしかねない

消費税増税の必要性は認めるものの、拙速な政策は国民政策を混乱させるだけである。また、ここでの解散総選挙も「大義」は感じられないし、政治空白を招くだけであることから、やり方として強引過ぎると感じる。

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研究開発「快適な天然素材住宅の生活と脱温暖化を『森と街』の直接連携で実現する」最終報告書

JST-RISTEX「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」研究開発領域で平成21年10月から4年余り行ってきた研究開発の最終報告書がアップされました(下記URL)。同じものですが、下記に貼付します。

■JST-RISTEXのサイト

研究開発プログラム「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」

■最終報告書

研究開発実施最終報告書

※年次報告書は下記のURL(私のブログ)にも貼付しています

平成21~24年度研究報告書(「連絡先&研究業績(論文等)」の下の方にあります)

研究代表:田中 優(天然住宅・共同代表)

実施主体:天然住宅、埼玉大学、早稲田大学、名古屋大学

報告書編集:前田拓生

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追加情報(『成熟経済下における日本金融のあり方』について)

教科書として使用している『成熟経済下における日本金融のあり方』を高崎経済大学生協さんに追加で購入してもらい、明日(7/31木)には店頭に並ぶとのことです。

http://www.univcoop.jp/takakei/

まだ購入していない銀行論受講の高経大学生は購入してください。

 

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教科書について(高経大)

本来は講義に必要なので教科書(成熟経済下における日本金融のあり方)は購入済みであるはずですが・・・

まだ購入していない学生がいるようなので、高経大生協さんに追加で入荷してもらうようにお願いをしました。後期も引き続き使用するので、まだ購入していない学生は生協さんで買ってください。来週(8/4月)の試験当日までには入手できるように手配してもらうようにお願いもしています。

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国際収支関連統計の見直し

平成26年1月から国際収支統計は大幅な見直しが行われているため、本ブログにおける当該統計に関する記述は古い内容となっています。

この見直しによって、旧資本収支はなくなり、金融収支が誕生するとともに、この金融収支には旧外貨準備増減が含まれることとなっています。また、旧その他資本収支は新たに資本移転等収支となり、経常収支及び金融収支と並ぶ大項目になりました。

なお、旧所得収支は第一次所得収支に、旧経常移転収支は第二次所得収支になりました。

その他、いろいろと修正点があるので、下記貼付で確認してください。

菊地 渉「国際収支関連統計の見直しについて」『ファイナンス 2013.11』

 

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ICAE(台北)研究報告_2014.6.1

本日、台湾科技大学(台北)で研究発表をしました。

いろいろとみなさんに助けていただきました。

ありがとうございました。

下記の貼付ファイルは報告時の発表用PPTです。

0601)Direct Supply Chain(maeda)

発表時)①

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